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ベトナムのオフィスづくりのイロハ

ベトナムのオフィスづくりのイロハ

ベトナムでは、執務チェアの座面にあぐらをかいて仕事をする女性をたまに見かけます。
また、昼食後に昼寝をする文化もあります。入社初日に毛布と枕を持参したスタッフに驚いた記憶もあります。オフィスを通じて日本との文化の違いを感じる機会はとても多く、今回はベトナムのオフィスづくりの簡単なポイントを紹介します。

ベトナムのオフィスづくりのイロハ
ベトナムではほぼ全員と言ってよいほど、バイク通勤をしています。オフィス探しの際も、オフィスビル内のバイク駐輪場のキャパや月料金を調べることは、ベトナムらしい事前のチェックポイントと言えるでしょう。

(ベトナム人女性は紫外線対策をしっかりしながらバイク通勤します。)

ベトナムのオフィスビルの空調設備は、機器のコンディションにバラツキが多く、小部屋の多いオフィスのレイアウトの際などには、空調のキャパシティに過不足がないか、特に注意が必要です。
また、オフィスの床については、ベトナムではOAフロアがほとんど普及していないため、コンクリートの構造床の上に敷設されているモルタル層をハツって電気やLAN配管を埋め込むのが一般的です。
(ローカルのビルは、このように凹凸の激しいモルタル下地床面も見受けられます。このままではオフィスの床の仕上げ材が施工できないため、床レベルの調整に余計な費用が発生するケースもあります)

ベトナムのオフィスビルの窓は、複層ガラスはごくわずかです。多くは単板ガラスですので、日射の影響を強く受ける傾向にあり、オフィスの内見時には、窓方位の確認も行った方がよいでしょう。

パントリーを充実させる重要性

(誰とでもきさくに和気あいあいなのがベトナム人のコミュニケーション)

自分のデスクで昼食を食べることは日本では当たり前かもしれませんが、ベトナムでは分け隔てなく大人数で集まって和気あいあい食事をするのが普通です。オフィスのパントリーしかり、集まって食事ができるスペースを充実させることは、ベトナム人にとって、「仕事場の快適さ」をジャッジする上で、重要なポイントと言えるでしょう。

(バリアブンタウに新設したSEIKO PMC様の工場内のカラフルな食堂テーブル)

特にベトナム南部は常夏のため、いろいろな南国フルーツをパントリーでおやつに食べる光景をよく目にします。

(ある日のスタッフ達のおやつ。
ジャックフルーツ、キウイ、分担、柿。緑色はドリアンクリームのお菓子)

デザインの自由度が高いベトナム
日本と異なり、ベトナムではビジネスウェアの自由度が高いため、いわゆる白い壁、グレーの床、グレーのスチールデスクのザ・ニッポン的オフィスはベトナム人には面白みのない地味なインテリアに映ります。
喜怒哀楽に正直で気さくな人が多いベトナムでは、レイアウトやインテリアの工夫ひとつで、モチベーションも高まり、チームのコミュニケーションも活性化しやすくなります。企業理念やスローガンをグラフィックペイントで壁に描いたり、企業のキーカラーを大胆にデザインに取り込むなど、オフィス・デザインのレンジは、全体的に日本より自由度が進んでいると捉えた方がよいでしょう。

(Tiger Marketing Vietnam様のホーチミンオフィスのミーティングルーム )

(Kewpie Vietnam様のハノイ・オフィスのエントランスホール)

(KOBO ASIA様のホーチミンオフィスの多目的スペース)

家具はベトナムではどうしているか?
オフィス家具は執務デスク、ワゴン収納、書類キャビネット、会議テーブルなどありますが、日本と異なりローカル既製品のクオリティが低い傾向にあり、大半はベトナムでは内装工事業者が造作することがポピュラーです。また造作は安価であり、インテリアにも調和しやすいメリットがあります。金額は上がりますが、ベトナム国内在庫のある日系什器メーカーの執務デスクやキャビネット類もありますが、現地相場に比べますとどうしても金額が高い傾向にありますので需要が大きくは伸びていないのが現状です。しかしながら、チェアに関しては、ローカル製品が安かろう悪かろうで故障が多く、日系製品のチェア購入を必ず推奨しています。因みにベトナム人は、背もたれのリクライニングの反発力の弱いものを好む傾向にあります。

問題が多い工場内オフィス
街場のオフィスのデザインやレイアウトが著しく発展している一方、郊外の工業団地の工場内に設けられるオフィスに関しては、未だに前時代的でいわゆる‘事務所’にとどまっているのが実情です。

工場内オフィスのレイアウトとデザインは、未精査の詳細が多く潜んでおり、そのフロー自体に問題を抱えております。
工場建設では、初期にゼネコンさんの提案打合せからはじまり、工場内の生産設備のレイアウトや区画割に焦点が当てられる一方で、広いオフィス区画内はラフなレイアウト検討がなされただけで見積コンペがはじまり、業者確定から工場建設へ一気に着手する流れにあります。
工場建設の場合、生産設備の打ち合わせやレイアウトに膨大な精査手間がかかり、オフィス区画内の細かなところまでは手が回らないのが大半の現実であります。

よって、着手後も工場内のオフィスは、部門毎の座席数、オフィス内導線、複合機や金庫の位置など、計画初期から竣工に至るまで、細部のオフィスレイアウトの検討がなされていないまま、引き渡しを迎えてしまうケースが実情だと思います。
また、検討ができたとしても、オフィスや会議室、応接室内の什器レイアウトが最後の方で変更決定されたために、デスクや会議テーブルの位置と、実際の電源LANの位置にズレが生じており、新築の工場なのに残念な部分も数多く見受けられます。

(写真の中央左にLANや電源の取り出し位置があり、打ち合わせ通りに
執務デスクや会議テーブルを設置できないケースが非常に多い。)

工場内のオフィス、会議室、応接室、食堂やロッカールームなどはオフィス内装業者へも連絡を取り、初期の段階からレイアウトの提案を受けて打合せを並行して行うことをおすすめします。

ベトナムのオフィスづくりに関しましては、他にも沢山の注意ポイントがありますので、
また機会がありましたらレポートをさせていただきます。

プロフィール
吉越 誠一郎(よしこし・せいいちろう)
1971年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。
FRONTIER CONSULTING VIETNAMホーチミン支店長。
2017年よりベトナムに在住し、進出や移転オフィスの設計施工、オフィスのコンサルティング業務に携わる。FRONTIER CONSULTINGは日本と海外合わせて5000件以上の日系企業のオフィス施工経験をもち、ベトナムではオフィス内装、工場や店舗内装、家具プランニングまで幅広く活動中。https://fcv.vn/