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マレーシアの開発許可及び環境アセスメント

マレーシアの開発許可及び環境アセスメント

マレーシアは1974年に環境法(EQA/ Environmental Quality Act)を制定し、その後順次改訂されている。また、2002年には国家環境政策が天然資源環境省によって立案され、環境に優しく持続可能な開発という方針が認可されるなど、環境意識は伝統的に高い国の一つである。リサイクルや罰則規定などを強化した環境新法を2016年頃から準備しており、2020年末現在の報道では政府承認を待っている状況である。

環境対策において日本との関係も長く、マレーシアに進出した日本の製造業の環境対策技術に関する調査報告書が2000年に発表されている。また、近年の代表的な事例として、環境省「令和2年度脱炭素社会実現のための都市間連携事業委託業務」として採択されている「イスカンダル地域における脱炭素化促進事業(北九州市―イスカンダル開発地域)」等があげられる。廃棄物の焼却処理熱を利用した廃熱発電事業である。上述の環境新法に関しても、JICAが技術提携プログラムで支援している。

本稿ではマレーシアの現行開発許可と(新法の前の)現行環境アセスメント EIA/Environmental Impact Assessment の概要を説明する。なお、下記に記載する内容は標準的な手続きなので、個々のプロジェクトにおいては関係省庁等を十分調査し、詳細を慎重に進める必要がある。また、上述の環境新法の動向も調査が必要となる。

先ず、全ての建設計画において開発許可 DO/ Development Order を取得する必要がある。申請は各自治体となり、窓口が一本化(OSC/One Stop Centre)されている。申請者は土地所有者又は代理人となり、DOの有効期間は更新しない限り1年間となる。
Subang Jaya州の申請期間は下記の通り。

1. 申請受付確認作業 (申請に必要な書類有無の確認) 5日間
2. 自治体の技術員による審査 40日間
3. 申請者との質疑対応期間 14日間
4. 隣地所有者への通知 28日間
5. 隣地所有者からの質疑対応 30日間
6. 自治体の許認可審査 14日間
合計 131日間

隣地所有者から特に異議がでなければ、期間は短縮できる場合もある。また、自治体により期間が異なる。

マレーシアの環境アセスEIAは先進国と同等の手続きが必要となっており、厳格に運用されている。
EIAの実施及び申請は環境局に登録されている専門家に依頼する。登録環境専門家は、マレーシア環境学会(EiMAS The Environment Institute of Malaysia)主催の講座を定期的に受講するなど、継続的なトレーニングに力を入れている。

EIAの対象事業は環境法の別表1と2に明記されている。農業、空港、港湾、リゾート開発など多分野が対象となっているが、工業関係の主な項目を下記に示す。なお、対象ではない事業活動でも 立地適正評価 (Penilaian Awal Tapak / PAT)の実施可否について環境局に確認が必要である。
環境法の対象事業(工業関係の主なもの、詳細は環境法別表参照):

日産100トン以上の化学工場
石油化学は日産50トン以上
傾斜地開発 25度以上35度以下の傾斜地割合が50%以上の土地開発
排水及び廃棄物処理
地下水利用 4,500m3/日 以上

EIAは2段階で実施される。初期EIAは環境局において技術審査を行う。環境影響が大きい特定の分野は詳細EIAが必要となり、審査には市民も参加する。環境法で規定されている審査期間は下記の通り。

初期EIA 技術審査期間     5週間
詳細EIA 技術審査期間     12週間
技術審査後の許認可作業期間  90日

実際の期間は自治体で異なるので、プロジェクト実施においては事前に確認する必要がある。
マレーシアの環境法体系については、日本語の詳細ガイドが発行されている。
(マレーシア環境法体系ガイド2017年 日本語ガイド 30万円(税別) EnviX)
また、環境技術に関する優遇措置は2019年度に法や予算整備が行われ、ガイドライン等が発表されている。詳しくはマレーシア環境技術公社(MyHIJAU)https://www.myhijau.my/ 参照。

最後に、工業系プロジェクトにおいて最終許可までの一般的なフロー図を下記に纏めた。

【執筆者】
シーエムプラス海外情報発信HP事務局