アメリカ合衆国の建設基本情報
アメリカ合衆国の人口、経済規模などの基礎情報、建設単価や建設市況などの建設情報をまとめました。
1. 基礎データ (JETRO)
1.1. 国土: 983万3,517平方キロメートル(日本の26倍)
1.2. 人口: 3億3,144万9,281人(2020年4月1日時点、2020年国勢調査)
アメリカ合衆国の人口の大半は、東部と西海岸の大都市圏などに住んでいます。
1.3. 経済規模 GDP: 22,996,000,000,000ドル(世界のGDPの約4分の1)
1.4. 経済規模 GDP 一人当り: 69,221ドル
1.5. 気候風土:
アメリカ合衆国の国土は広く、アメリカの気象は一言で語れませんが、東西南北でそれぞれ自然災害も異なる国です。
東部: 湿潤大陸性気候、ハリケーン、寒波
中部: 亜寒帯湿潤気候、トルネード、山火事、寒波、山火事
南部: 温暖湿潤気候、集中豪雨、ハリケーン、トルネード
西部: ステップ気候、山火事、地震、乾燥
2. 建設情報(現地の情報)
2.1. 建設資材
コロナ禍でのインフレや輸入資材の遅延、ウクライナ問題でのステンレススティールを始めとした資材納品の長納期化が発生しています。
ただし、クリティカルな長納期品の品種と期間が判明していますのでそれらの対策を講じることが可能です。また最近の米国のインフレ抑制政策で建築資材の高騰も落ち着きを取り戻しつつあります。
2.2. 建設単価(米国統計局データ)
コンクリート一次製品の価格指標 2012~2022
2.3. 建設関連市況
アメリカの建設関連市況は、コロナ禍のインフレと労働者不足で急激な高騰をしていましたが、インフレ抑制策で落ち着きを取り戻しつつあります。
アメリカ合衆国は、経済成長と人口増が見込まれる巨大な市場であり、またカントリーリスクが比較的少ないため、製造業の投資で注目を集めています。
各州、市は基本的に産業誘致に積極的で、また政府が実施している安全保障政策からも米国内の製造工場は歓迎されています。
アリゾナ州に世界最大の半導体ファウンドリである台湾のTSMCの工場やテキサス州にサムスン電子の半導体工場、ノースカロライナ州にトヨタの車載用電池工場が決定したりサウスカロライナ州に日本電解の工場の建設などが進んでいます
2.4. 工場建設用地の選定
米国では各州や市が独自に工業団地を設定しているケースが多くありますが、新設の工業団地などではユーティリティの引き込みが将来に実施がされる予定だったり、そのため新規に引き込む費用が高額だったり、道路を含むインフラ整備も未定であったりすることも珍しくありません。
ただし逆に新規に工業団地に進出する場合、市の補助金などを利用して有利なインセンティブ交渉が出来る場合があります。
電力の引き込みは地元の電力会社と個別におこなうことになりますが、交渉と新規工場候補地の場合引き込み位置が離れていることが多く、年単位の期間が必要なことがあります。
また広大な国土の米国では東西海岸の人口密集地間の運送はトラック輸送が便利ですが費用が高く鉄道利用を考えることも多くあります。鉄道は東部では比較的鉄道網が充実しているものの西部では鉄道網が限られた地点になることが多く、建設用地の選定時に大きなポイントになります。また、鉄道会社との引き込み線の敷設と条件交渉も期間が掛かる項目です。
ITの最先端のアメリカですが、広大な国土の為情報インフラで光回線の引き込み等の条件も土地選定で大切な項目です。アメリカは都市から離れると携帯電話でさえ繋がらないエリアが多くあります。
工場建設では、環境問題への対応も大切なポイントです。
カリフォルニア州をはじめ環境保護に敏感な州では、時には工場建設工事の1年以上前に環境申請の提出や、地元への公聴会を含む説明などを求められることもあります。しかしこれも州、市により大きく異なりますので、事前の確認が必要です。
更に多くの水を使用する工場の場合、特に西海岸では水不足が深刻で候補地に市水の供給が十分でない場合もあり、大きな土地選定のポイントになります。
2.5. 設計及び建設品質
米国はDXの先進国であり、工場の設計も建設もBIMの利用をはじめ3D化で設計の可視化や配管設置の調整業務などが先端技術で進んでいます。
しかし、米国は他民族の国でありお互いの合意を得るために多くの時間を費やします。加えて日米文化の違いと、コミュニケーションギャップからも想定以上に時間が経ってしまいます。そこで、日本からの進出製造業が工場の設計の意図や方針を伝え実現化するには多くの時間と費用が必要になります。
更に、米国での環境申請だけでなく、現地の法令や基準の遵守、各種ユーティリティの申請、建設費用の見積りや修正などで日本以上に期間が必要になることが多あります。これらの期間を節約するために日本で基本的な生産プロセスと生産設ユーティリティそれに適応した建築、空調、ユーティリティ、電気の基本設計を決めてから米国に進出することで期間の節約する例も多くあります。
また、アメリカでは工場内のオフィスなどを除いて平屋構造が一般的でコストもこなれています。逆に2階層以上の工場を建設しようと計画すると平米単価が高額になってしまうことが多くあります。
米国ではFMグローバルを始めとした保険対応が工場建設の初期条件で必要になってきます。建設材料や屋根の強度までに影響が及ぶことがあり、建設費用も異なってきます。ただし企業様の会社全体の保険費用とのバランスを検討されて、その採用の可否を決めることが肝要です。
土地の契約の交渉と契約内容の総合での検討は、弁護士を含めて検討機関が2ヵ月以上かかることもあります。契約書の記載内容や責任範囲には十分な確認が必要ですこれにより後々トラブルの回避につながるためです。
アメリカでの建設会社はもちろん日系のゼネコンさんがいて日本のようなお客様への対応をされています。しかし既に米国に進出をされている工場では、メンテナンスや増設工事などで米国の建設、設備会社を選ぶことも多くあります。
その米国の建設会社は日本の建設会社とビジネス習慣や建設までのプロセスも異なります。建設工事は伝統的には設計と施工を分離して発注しますが、最近は設計と施工を同じ建設会社に依頼する(Design & Build)契約も増えており、またGMP(最高建設額保証)制度を利用して米国建設会社さんに工事を依頼する企業様もいらっしゃいます。
また、米国の建設会社さんに依頼する場合は、設計施工を分離する場合は勿論、設計施工を一括して依頼する場合でもお客様側にスタッフを準備して設計から建設までしっかり監理する必要があります。
2.6 スケジュールと建設コスト
米国では通常日本より設計スケジュールに長い期間が掛かります。日本国内ではあたりまえと思われることでも各種設計条件として明確にし、またその意図を正確に説明し議論する段階を踏んで設計を進める必要があります。更にインターネットを介して分業化が進んだ米国では、今まで以上に設計時の変更が設計工程を大きく延長させてしまうことになります。
建設工事のスケジュールでも、現在は米国でもコロナ禍とインフレで長納期品の建材、設備が多くあります、また環境申請を含めた各種申請が工事開始の要件にもなりますので、これらを考慮した全体スケジュールを組み立てることがとても大切です。
建設コストは各設計段階で設計会社や建設会社に提出依頼が可能です。しかし設計での不明点や見落とし、施工で発生する変更や追加、更に物価上昇への対応を含めてコンテンジェンシという予備費を予算に持つことが通常おこなわれます。各段階で予算に適合させたVEやCDの提案とともに、コンテンジェンシの内容と割合を決めてゆくことが大切です。
3. アメリカ合衆国の魅力
前述のように、経済発展が見込まれ、人口も増加して、比較的カントリーリスクの少ない米国市場は、特に製造業のお客様にとって将来に渡りとても魅力のある国と思います。