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米国での工場建設における官庁申請

米国での工場建設における官庁申請

米国に工場建設で注意しなければならない主な申請について

■環境関連許認可申請
環境関連申請は主には下記のような法規制がありますが、州、郡、市により規制内容の程度も申請時期や期間も大きく異なりますので、早期に確認が必要です。

  • Air Permit:
    建設関連の申請の内、米国でしばしば大きな影響を及ぼす申請が環境関連の申請です。その中でも大気汚染防止の申請(Air Permit)は期間が半年から2年と長く、建築申請にも影響を及ぼすことが多く、注意が必要です。西海岸の地域では環境申請にたいする審査が厳しいです。規制内容も地域により異なりますが、早期に既存の工場などを参考にしてNoxやSoxやPM2.5などの値を抑えて当局と打合せが必要です。
  • その他環境関連申請:
    既設の工場団地で環境申請が免除されていない場合は、次のような申請が必要になる場合がありますので事前に確認が肝要です。絶滅危惧種、野生生物保護、渡り鳥保護、湿地帯の開発申請、石油類流失対策などです。
  • その他関連申請:
    連邦航空局への申請(主に建物の高さなど)、文化資源および歴史的資源保護などがあります。

■用途地域の変更申請

  • 工場建設予定地の用途地域(Zooning)の変更が必要な場合には変更期間が半年から1年程度掛かる場合が多く、また近隣の方々に公聴会などでの説明をもとめられることもありますので早期に当局と打合せが必要です。
  • 加えてハイウェイや周辺道路での交通渋滞などのシミュレーションや調査を求められる場合もありますので、併せて早期の確認が必要です。

■建設工事関連に伴う許認可申請
建設工事関連に伴う許認可申請も、州、郡、市により大きく規制内容、申請時期、影響を及ぼす関連工事も異なりますので、関係部署に確認が必要です。

  • 雨水汚染防止計画 SWPPP:
    建設工事(土木を含め)の申請に必要になります。
  • 排水許可 Wastewater permit:
    市などの排水処理設備に接続するための申請です、公共機関の排水処理量に制約がある場合が多く、事前にしっかりと当局と打合せする必要があります。
  • 土木工事許可 Civil permit:
    整地や掘削工事のための申請です。Fast Track方式で先行・分割して申請が可能です。
  • 基礎工事許可 Foundation permit:
    基礎工事をするための申請です。上記と同様Fast Track方式では先行して申請が可能です。
  • 屋根外壁工事許可 Shell permit:
    屋根、外壁の工事申請です。
  • 建設一般許可 Full building permit:
    建設工事の内装を含めた全般の許可申請です。
  • 空調設備許可 Mechanical Permit:
    空調工事をする許可申請です。
  • 給排水・管工事設備許可 Plumbing Permit:
    給排水、敷地の埋設配管を含む工事申請です。
  • 市水給水許可 Tap and Impact- Preliminary approval to hookup to city service (Reqd. for Bldg. Permit) – Allowance:
    市水供給の申請です。米国の西側では特に水不足が深刻で事前に関係官庁と綿密な打ち合わせで、供給量、費用、水質などの確認が必要です。
  • 消防許可 Final Commercial Fire District Approval :
    消防基準NFPAに従った設備の申請です。
  • 電気設備許可 Electrical Permit:
    電気設備工事のための申請です。
  • 電力供給接続許可 Power connection :
    電力供給会社との交渉が前提ですが、接続許可が別に必要な場合もあります。

■その他工場建設で注意しなければならない申請

  • 開発申請など:
    土地開発、工業団地の区分け、道路拡張が必要な場合申請が必要です。
  • プランニング許可など:
    地元に工場建設の概要を開示して、環境調査をふくめて公聴会に出席して地元の合意を得ることが必要な場合もあります。
  • 電力会社、ガス供給会社、情報通信会社との引き込み交渉:
    特に引き込みと受電設備(電力供給会社側が提供する場合が多いい)の設置期間と初期費用と電力費用、停電対策など、引込工事期間に2~3年掛かることもあり、早期の交渉が必要です。ガスの引き込みも半年かかることもあります。情報通信も広い米国では設置されていない地域も多く、その場合は早期に交渉が必要です。
  • 鉄道会社との引き込み線交渉:
    鉄道輸送を利用する場合、鉄道の引き込み線の期間、費用などの打合せが事前に必要です。鉄道を引込むには大きな半径が必要なために敷地計画にも工場のレイアウトにも大きく影響しますので、工場の基本計画前に交渉を進める必要があります。

■その他の申請

  • 保険関連:
    米国で広く利用されている保険会社FM Global (Factory Mutual保険会社の名称)standard などを適応するかどうかの確認です。当局への申請は必要ありませんが、工場の設計においてスプリンクラーの設置基準ばかりでなく、屋根の構造などについても指定の基準があります。これに従うと、建設コストは増えるもののお客様の全社的な保険の料率低減と併せて検討されて決めます。
  • LEED:
    LEEDとは米国を中心とした建築の環境性能評価システムです。工場がLEEDの規定に適合してどれほど環境に優しい工場であるかの民間の認証です。最近は下火になっているようですが、企業様の環境方針などでLEEDのゴールドレベル、シルバーレベルなどの取得を要求事項として求めるお客様もいらっしゃいます。取得には土地の選定から、従業員のバス利用通勤、省エネタイプの冷熱源の採用、雨水の再利用などを点数化して基準の点数になるように、設計段階から空調の省エネ度のシミュレーションを含めて計画を進める必要があります。またこの申請には専門のコンサルによる事前の点数確認や審査機関との交渉が不可欠であり、上記のシミュレーションや省エネ機器の採用をふくめてかなりの費用と期間が必要になります。