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【フィリピン】フィリピンへの進出の手引き

【フィリピン】フィリピンへの進出の手引き

フィリピンの2023年経済成長率は5.6%、2024年1月から5月までの海外直接投資純流入は前年同期比で約16%増加しました。ワーカーの賃金は過去10年ほぼ横ばい、その人件費の競争力とともに、英語が公用語ですので、社内外問わずコミュニケーションに障害が少なく、あらゆる書類を英語で処理できることも、フィリピンの魅力といわれます。
今回は、アジアを中心に6か国で9つの工業団地を開発・運営する住友商事の都市総合開発グループ 工業団地・サスティナビリティSBU 工業団地ユニットフィリピン駐在員 栗生祐太郎氏に、フィリピンへの製造業の投資環境について伺いました。

CM Plus:最初に、フィリピンというと、治安の悪さが印象としてあるのですが、実際は生活されていかがでしょうか。
栗生氏:確かに、日本のような治安が良い国と比べますと、心配される点も多いと思いますが、普通に生活している分には治安の悪さはそこまで感じません。日本人が住んでいる地域は、フィリピンでも富裕層が生活しているところですので、基本的には治安の心配はありません。ただ、電車やバス、タクシーといった公共交通の利用は推奨されてなく、駐在員の方は会社が手配したドライバー付きの車を利用したり、車を購入して自身で運転したりしています。ショッピングモールや街中の移動中には、スリ等の軽犯罪に気を付けた方が良いですが、私の住んでいるエリアでは身の危険を感じることはないですし、夜歩いても問題ありません。その他のエリアでも危険と言われているエリアに入らなければ身の危険を感じることも殆どありません。

CM Plus:皆さん単身で来られているのですか。
栗生氏:家族同伴で駐在されている方も多いです。特に小学校以下のお子さんの場合には、日本人学校もあるせいか、非常に多いですね。学校のあるエリア、BGC(Bonifacio Global City)ですが、特に日本とほぼ変わらない環境で生活ができます。駐在員が住まれているエリアはマカティ、ロックウェル、BGCの3か所があります。おおむね単身駐在員の多くはマカティに住み、小さなお子さん連れの場合はロックウェル、小学生以上になりますと日本人学校のあるBGCに住まわれる方が多いです。今、2万人ほどの日本人がフィリピンに在住されています。日本の食材も豊富で、日本食レストランは現地でも大人気で、沢山あります。2016年ごろから、大手のフランチャイズも出てきていて、丸亀製麺や、Coco壱、一風堂などもありますね。ニトリさんやユニクロなども出られています。おそらく10年前ぐらいのフィリピンのイメージを持たれていると、ビックリなさると思います。
住友商事は6か国で、9つの工業団地を運営していますが、生活レベルでいえば、あくまで個人の感想ですがフィリピンが一番良いのではないでしょうか。

CM Plus:ありがとうございます。日本人駐在員にも生活しやすい環境が整っていることがわかりました。では、コロナ後の製造業の進出状況から伺えますか。
栗生氏:中国から拠点を移す、あるいは海外の製造拠点が1か所だけの企業さんが、事業継続の観点から、フィリピンに進出される動きがみられます。日本の人手不足から海外に拠点を移す企業も増えてきています。ただ、昨今の円安のせいか、検討はされるのですが、意思決定はタイミングを見ている企業さんが多い印象です。進出検討のお引き合いの数自体は、コロナ前とそれ程変わりありません。

CM Plus:フィリピンに進出される企業さんはどのような業種が多いですか?
栗生氏:以前であれば自動車やプリンターなどのメーカー様、またその企業のサプライヤー様が多かった印象ですが、最近は製造業で輸出をメインというよりは、旺盛なフィリピンの内需を求めてサービス業や消費財(特に耐久消費財)の業態で進出を検討されている企業さんが最近は多くなっています。製造業でいえば今まで、販売会社だけをフィリピンにもち、製品はインドネシアなどの国から輸入して国内販売していた企業が、製造もフィリピンに構え、一貫した事業形態を検討されている企業が多くなってきている印象です。

CM Plus:フィリピンが国として誘致に力を入れている分野はありますか?
栗生氏: IT、先進技術と聞きますが、特に力をいれている分野というのはないと思います。全般的に、外資誘致には大変力を入れています。

CM Plus:フィリピンの工業団地の特徴を教えてください。
栗生氏:大手財閥がデベロッパー企業をもっていて、大型の工業団地は財閥による開発・運営が多く、小さな、100ヘクタール未満の工業団地は、地場のデベロッパーが開発している状況です。新規の工業団地の開発もまだまだ進んでいます。

CM Plus:フィリピンの外資による投資規制はどのようになっていますか?
栗生氏:PEZA(ペザ)- Philippines Economic Zone Authority – という企業に対し各種優遇措置を付与している機関があり、PEZAの定めたエリア内で操業する輸出型企業に対して税制優遇が定められています。また、2021年にCREATE法という新たな税制遊具措置法が制定されましたが、より魅力的な税制優遇を付与し、フィリピンへの投資を呼び込むために今このCREATE法の改正案が議論されています。
優遇の内容ですが、所得税(IT)の免税、付加価値税(VAT)の免税、関税の免除、法人税(CIT)の優遇が主なものになります。具体的には、12%の付加価値税が10年間免除、4年から7年の所得税免税があります。所得税免税は、エリアによって受けられる期間が違ってきます。いずれも、PEZA認定のEconomicゾーン(ECOゾーン)の域内に工場を構え、PEZAにそのプロジェクトの事業承認を受けることで享受できます。所得税の免税期間終了後は、総所得額の5%が免税されます。海外から投資の製造業の場合、ECOゾーンに認定されている工業団地に入居されるのが一般的です。

CM Plus:次に、企業設立のプロセスについて簡単に教えていただけますか。
栗生氏:まずは、進出先の場所の確保、投資元の企業が予約契約を締結します。次に、現地法人の設立をして、設立した後に、その現地法人が PEZAに事業認可等の許認可の申請をし、PEZAの申請がおりた後に、工業団地事業者と賃貸借契約を結びます。弊社の場合、予約契約からご入居までおよそ4 – 5か月みていただければいいと思います。

CM Plus:土地使用に関する外資の規制はどのようになっていますか?
栗生氏:外資には土地の所有は認められていませんので、基本的に外資企業は長期リース(50年契約+25年の延長)になります。

CM Plus:現法設立に関して、最低資本金など条件はありますか?
栗生氏:最低資本金の定めはフィリピンの会社法では5,000ペソ(約13,000円)と定められています。また、扱う品や製品によっては規制がありますので、関係省庁若しくは投資委員会への確認が必要です。環境アセスメントは、国として製造・取り扱いを禁じているものと、工業団地の方で独自で規制しているケースがあります。

CM Plus:人の採用に関してですが、フィリピンの人材の状況はいかがでしょうか。
栗生氏:若い世代が豊富ですので、採用で困ることはありません。最新の最低賃金は479ペソ/日(約1,210円)です。(2024年9月1日時点)

CM Plus:最後になりますが、御社が開発、運営されている工業団地をご紹介ください。
栗生氏:FPIPは日系商社が運営に携わっているフィリピン唯一の工業団地になります。日本人スタッフが2名常駐し、日系企業をご支援する体制が整っています。設立後も、新たな法令や、改正など、日本語で情報提供できるのが強みです。FPIPは山のふもとの緑豊かな立地に位置し、ランドスケープにもこだわっています。団地内道路幅も広く、綺麗に整備された工業団地です。周辺には、ホテルや日本食レストランなどの商業施設や公園もあります。整備が行き届き、手厚いサポートを受けられる工業団地です。総面積は、約580ヘクタールで、150社が入居されていますが、ご提案可能な工業用地もまだ30ヘクタールほどございます。今、拡張中でECOゾーン申請をしている工業用地が50ヘクタールほどあります。拡張はまだまだ継続的に行っていますので将来的には、さらなる土地がご提供できる予定です。現在、ご提案できる最小区画は、2ヘクタール、最大で15ヘクタール区画です。当社の場合、支払いは、長期リースではなく、月極めリースとなります。リース期間の決まりはありません。

CM Plus:最後にフィリピンへ進出するアドバンテージを教えてください。
栗生氏:フィリピン人は英語が堪能でマネージャーからワーカーレベルまで、英語でのコミュニケーションが可能というところが一番のアドバンテージだと思います。また、東京から4時間半の立地であるため日本との行き来が容易であるだけではなく、東南アジアのハブになれる立地で、海路、空路ともに、ロジスティクスも豊富なアクセスがあるというのがもうひとつのアドバンテージです。

CM Plus:逆に、留意点は何かございますか。
栗生氏:税法や規制がよく変わるため、法改正に伴う対応の解釈の煩雑さが、懸念点だと思います。

CM Plus:貴重な情報ありがとうございました。

 

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