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ベトナム「改正労働組合法」が2025年7月1日から施行

ベトナム「改正労働組合法」が2025年7月1日から施行

– 外国人労働者に組合加入が認められます –

 

2024年11月27日、改正労働組合法がベトナム国会で可決されました。新たに可決された法律は6章、37条から成り、2025年7月1日から施行されます。注目される改正点は、ベトナムで12ヶ月以上の労働契約のもと働く外国人労働者へ、草の根労働組合への加入および労働組合活動に参加する権利が付与されることです。

外国人労働者に組合加入の門戸が開いた理由として、労働組合組織が他国の文化、思考、スキル、働き方に触れることで、組織運営が多様化し、専門性や管理能力の向上につながり、より高度な運営モデルへ発展することが期待されると、説明されていますが、ベトナムの労働組合制度が、グローバルな労働慣行に沿ったものであり、開放的、進歩的な発展を遂げていることの反映だと諸外国に明示したものといえるでしょう。

一方、外国人労働者の組合活動に対する規制も盛り込まれています。第4条5項では、「労働組合の役職者(専任、非常勤役員)は、労働組合組織の職務を遂行するために選出、採用、任命、指名されたベトナム国籍保持者」と規定されており、つまり、労働組合に加入する外国人労働者は、労働組合専任、非常勤役職への立候補や指名を受けることは認められず、労働組合活動への参加は草の根労働組合(企業内組合)のみに限られます。

また、第5条3項は、「労働組合の設立、加入、運営は、ベトナム労働組合憲章、本法およびその他の関連法規の規定を遵守しなければならない」と定め、外国人労働者の労働組合への加入により、組合の“多様化”が期待されるとしつつ、その運営は、ベトナム労働組合憲章に規定され、ベトナム労働総連合の指導に準じることが求められています。

今回の改正法により、外国人労働者が自らの権利を守り、意見を表明するための新たなチャネルを得ることになることは、経営側として大いに留意する必要があります。また、現地法人との労働契約により働く、いわゆる“現地採用”者が、組合に加入することで(12か月以上という条件がありますが)、組合員に付与される様々な権利を主張し、保護される立場になることは、現地採用者にとって、労働環境の大きな転機といえるでしょう。

その他の改正点として、いくつか挙げます。

  • 労働組合を設立し、加入し、運営する権利を有する対象として、現行の組合法では、「機関、組織、企業で働くベトナム人労働者」と規定されていますが、改正組合法では、単に「ベトナム人労働者」となり、対象の範囲が緩和されています(第5条)。
  • 労働組合活動に関する禁止行為が、現行と比較し、かなり細かく規定されます(第10条)。

– 労働組合活動の結成、参加、参加の理由に係る差別の禁止。これには、以下の詳細を含みます。

  • 雇用契約を一方的に終了すること、雇用契約の締結または延長を一方的に中止すること、従業員を一方的に配置転換すること。
  • 賃金、労働時間、その他の労働における権利および義務に関して差別すること。
  • 性差別
  • 組合役員の評判を落とすことを目的とした虚偽の情報を流すこと。
  • 従業員または組合役員の組合活動への参加阻止、組合役員職務不履行、組合反対運動阻止のために、物質的または非物質的な利益を約束または提供すること。
  • 業務に関して不当に管理・支配、妨害し、または困難を課して、労働組合の活動を弱体化させること。

– 経済的措置、または労働組合組織に不利益をもたらす策を弄し、労働組合の設立や、運営を妨害または操作し、労働組合の機能、任務、権限の遂行を弱体化または無効化させること。
– 労働組合の権利を悪用して法に反し、国家の利益、機関・組織・企業・個人の正当な権利および利益を侵害すること。
また、労働組合費の不払い、支払い遅延、支払い先の不備、支払額不足が、禁止項目として明記されます。

  • 労働、生産、労働組合活動における功績を称えられ、報酬を得る権利が追加されます(第21条)。
  • 2012年労働法では規定の無かった組合費の免除、減額、一時停止が明文化されます(第30条)。具体的には、以下のとおりです。
    組合費が免除対象となる場合:
    企業法、破産法、協同組合法の規定に基づき、解散または破産した企業および協同組合で、分割後の資産が組合費の支払いに十分でない場合。ただし、主管機関が、支払い能力が依然としてあると認識した場合は、法の規定に従って徴収、支払い、処理が行われます。
    組合費が減額対象となる場合:
    経済的理由または不可抗力により困難に直面している機関、組織、企業は、組合費の減額を受ける権利を有するとあります。
    組合費の支払いを一時的に停止する場合:
    困難に直面し、生産および事業を一時的に停止せざるを得ず、組合費の支払いが不可能となった雇用主は、12ヶ月を超えない期間、支払いを一時的に停止する権利を有するとあります。

尚、労働組合費は現行の賃金の2%とする規定に、変わりありません。

施行までにはまだ時間があり、今後、セミナー等でも取り上げられるトピックかと思います。留意していただけましたら幸いです。

以上


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