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シリーズ 海外プロジェクトよもやま話 1

シリーズ 海外プロジェクトよもやま話 1

設計施工一括発注契約における主要追加クレーム項目

製造施設のEPC契約(設計・調達・工事一括契約)において、海外コントラクターは常に追加クレームの機会を逃すまいと身構えています。これに対抗するために発注者側責任者がプロジェクト遂行上、忘れてはいけない主要追加クレーム項目を整理してみました。日系コントラクターがEPCを遂行する場合は、日系発注者との過去・将来の関係を意識するので、腹立たしいほどのクレームをしてくることは少ないでしょうが、以下の項目に関する知識を持つことは発注者側責任者としても役立つでしょう。(日系コントラクターと言えども赤字に陥っている場合は、損失を取り戻すために徹底してクレームしてくる可能性はあります。)

  1. 発注者起因の変更・遅延
    • 役務範囲・仕様変更
      設計・機器・材料・施工方法などの変更指示により、追加作業や再設計が発生。
    • 情報提供の遅延
      発注者からの図面承認、技術情報、現場条件の提示が遅れた場合。
    • アクセス制限・現場引渡しの遅延
      サイト引き渡し、またはアクセスが予定より遅れた、または制限された場合。
    • 第三者契約の遅延
      発注者が手配すべきユーティリティ、インフラ、許認可が遅れた場合。
  2. 現場条件の変更・予期せぬ事象
    • 地盤条件の不一致
      契約時の地盤調査と実際の条件が異なり、基礎工事等に追加費用が発生。
    • 地下障害物の発見
      埋設物、汚染土壌、既存構造物などの撤去・処理費用。
    • 天候・自然災害
      異常気象、地震、洪水などによる工期延長と追加費用。
      (契約にForce Majeure条項が含まれているのが通常の契約書ですが、発生費用負担をどうするのかの明文化がされているか注意が必要です。 日本国内ですと追加費用は発注者側が負うとされていることも少なくありませんが、海外プロジェクトですとForce Majeureはだれの責任でもなく、発注者、請負者双方がそれぞれ自己が被った損害を負担するという契約もあり得ます。)
  3. 設計・調達・施工に関する追加要因
    • 発注者手配の長納期品の納期遅延
      発注者手配の特殊機器や海外調達品の納期遅延によるEPCコントラクター現場待機費用。
    • 設計変更に伴う再調達・再施工
      既に発注済みの機器や施工済み部分のやり直し費用。
    • 試運転・性能保証関連
      追加試験、性能未達による再調整・追加設備。
  4. 契約・法令・規制関連
    • 法令変更・規制強化
      契約締結後に適用された新しい安全基準、環境規制への対応費用。
    • 税制変更・関税増加
      輸入機器に対する関税率の変更など。
    • 許認可取得の遅延・追加要件
      官庁対応の追加資料作成、審査対応など。
  5. 労務・安全・現場管理関連
    • 安全対策強化
      発注者や法令による追加の安全設備・教育・監視体制。
    • 労務費の高騰
      予見しえない現地労働者の賃金上昇、技能者不足による外部手配。最低賃金が法令で変更される場合。
    • 現場管理費の増加
      追加クレームには直接費用だけでなく工期延長要求も含まれることが少なくありません。これを承認する場合、それに伴う管理人件費や仮設費用増加などを請求されるリスクがあります。これらは時には非常に高額となりますので注意が必要です。
  6. クレーム承認のためのポイント
    • 契約書の変更管理条項(Change/Variation Order Clause)に合致する項目なのか?
    • 追加費用の発生根拠が文書・証拠で記録・明確に示されているか(Site Instruction、Daily Reportなど)?
    • 追加発生通知義務期間内か?

以上、主な追加関連項目をまとめてみましたが、契約書作成時にこれらの追加クレームリスクを意識することがとても重要です。弊社(シーエムプラス)のような経験豊富なコンサルタントに相談することもご一考ください。

 

【執筆者】
シーエムプラス海外情報発信HP事務局


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