- 2026 . 01 . 15
- ホワイトペーパー
発注者視点で読み解く 海外建設プロジェクトのクレーム管理 (1)
プロジェクトマネージャーとして、国内プロジェクトはもとより、数多くの海外現場で経験を積んできました。 そのような我々とて、最初から全てを円滑に管理できていた訳ではありません。成功体験だけでなく、数々の失敗を重ねながら、海外建設プロジェクト特有の難しさを学んできました。

製造施設のEPC契約(設計・調達・工事一括契約)において、プロジェクトマネージャーとして特に留意してきた課題の一つが、追加費用や工期延長に関するクレームです。 これらの要因は多岐にわたり、発注者の対応、現場条件の変化、設計・調達・施工の各過程、契約条件や法令の変更、そして労務・安全管理など、さまざまな要素が複合的に絡み合って発生します。
特に海外案件では、初めて取引する海外工事会社が、発注者との将来的な関係維持よりも、契約上認められる追加クレームの機会を逃すまいと構えている傾向が強く見られます。 そのため、こうした状況に備え、発注者側の責任者としては、プロジェクト遂行上で想定されるクレーム要因をあらかじめ理解し、適切に対応する姿勢が不可欠です。
本連載では、発注者の立場で特に留意すべき主要な追加クレーム項目について、これから複数回にわたり、私自身の体験談を交えながら整理していきます。
■発注者による変更や遅延
発注者による変更や遅延は、プロジェクト全体に直接的かつ大きな影響を及ぼします。 設計、機器、材料、施工方法などに関する指示変更が生じれば、追加作業や再設計が必要となり、結果としてコスト増加や工期延長に繋がります。 また、図面の承認や技術情報、現場条件の提示が遅れることで、施工準備や工事の進行そのものが妨げられるケースも少なくありません。
さらに、建設現場の引渡しが予定より遅延したり、アクセス条件に制約が生じたりした場合には、作業開始が遅れ、全体スケジュールに影響を及ぼします。 例えば、建設地の引き渡しが契約条件より7日遅れた場合、工事完成予定日も7日遅れるとして、工期延長のクレームが主張されることがあります。 加えて、発注者が手配すべきユーティリティやインフラ、各種許認可の取得が遅れることも、施工停滞の要因となります。
これら発注者による変更や遅延は、大きく分けて二つの類型に整理出来ます。
一つは発注者内部の意思決定や調整に起因する「内部起因」、もう一つは発注者が独自に手配する生産機器や実験機器などに起因する「外部要因」です。
■内部要因による変更・遅延
内部要因でよく見られるのは、ある設計方針に基づいて設計が進み、成果物がまとまった段階で、発注者内部の確認・承認プロセスにおいて他部門から変更要求が出されるケースです。 経営層からの方針転換や追加要請が入ることも珍しくありません。
設計者や施工者が従来の窓口担当者と合意して進めてきた方針と異なる内容が、社内調整の結果として示された場合、結果的に設計変更を余儀なくされます。 これは多くのプロジェクトで一定の確率で発生する事象であり、あらかじめ起こり得るものとして認識しておくべきだと考えます。 起きない前提で進めること自体がリスクです。
こうした内部要因による変更リスクを低減するためには、設計方針を早い段階で文書化し、社内関係者の理解と合意を得ておくことが有効です。 当社では、「客先要求仕様書(URB = User Requirement Brief)」として設計方針を整理するとともに、概念設計の段階で施設全体像を目で見えるにし、関係者間での認識のズレを極力減らす取り組みを行っています。

■外部要因による変更・遅延
一方、外部要因に起因する変更や遅延は、内部要因に比べてコントロールがより困難です。 その理由は、発注者自身であっても工程を完全に掌握しきれない要素が含まれるためです。
典型的な例としては、発注者が別途発注する生産機器や実験機器の設計遅延、製作遅延、現場搬入の遅れが、全体のスケジュールに影響を及ぼすケースが挙げられます。 近年では、半導体不足をはじめとするサプライチェーンの混乱により、当初予定されていた納期が守られない事例も多く見受けられます。 また、海外メーカーによる設計の遅れや、設計情報の不備が原因で、想定外の混乱が生じることもあります。
このようなケースでは、建設工事会社が役務上、直接関与できない場面も多く、対応が後手に回ると、気付いた時には手遅れとなり、最終的には現場工程に大きなしわ寄せが生じます。 これを防ぐためには、あらかじめリスク管理項目としてこれらの要因を洗い出し、関係者間で継続的かつ緻密な情報共有と調整を行っていく他ありません。

次回以降の連載テーマは、以下の通りです。
1.発注者による変更や遅延
2.設計・調達・施工
3.現地条件の変更・予期せぬ事象
4.契約・法令・規制の変更
5.労務・安全・現場管理
6.クレームの承認・却下
当社サービスのご紹介
当社は、建設マネジメント(コンストラクションマネジメント、CM)に加え、プロジェクトの起案・構想段階から生産開始に至るまで、上流から下流までワンストップでお客様の成長を支援するプロジェクトマネジメント・コンサルタントの専門家集団です。
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