建設資材コストと設備供給の2023年の傾向
はじめに
弊社では、日本と北米におけるお客様の産業用施設建設支援のために、建築素材の価格傾向を追っています。
2023年初回として、2022年までの傾向を発表しましたが、その傾向に変化の兆しが現れました。2020年より高騰を続けてきた、建設資材と労務費の上昇カーブがなだらかになり始めました。弊社の聞く限り、コスト上昇から延期された北米プロジェクトがございましたが、そろそろ価格動向を注視する時期ではないか、という社内の議論もございます。
そこで今回は、建材原料・建築素材の日本と北米の価格動向、弊社プロジェクトマネジャーの見る北米の建材価格と労働市場の動向とその変化、を纏めます。
建材原料と建築素材の2023年上半期の傾向
日本と北米における2019年から2023年前半までの価格動向について、以下の指標傾向をまとめます。
本レポートで使用する価格指標
建材原料の価格 ロンドン金属取引所(LME)月初価格 |
グローバルの金属原料の価格動向 1.北米向け熱間圧延鋼板、4.銅、7.アルミ |
日本の建築資材価格 鉄鋼新聞の統計情報より |
日本の建築資材の価格動向 2.鋼材・鋼板価格、5.銅価格、8.アルミ地金、9.セメント価格 |
米国の建築資材価格変化 米労働省労働統計局 (BLS)発表の 生産者物価指数 (PPI) |
米国の建築資材の価格動向 3.鋼材・板金、6.銅線及びケーブル、9.アルミ圧延品、 10.コンクリート価格 |
金属資材とセメントの2023年の傾向
鉄鋼資材について、22年冬頃から価格の上昇は止まり、対20年比で100%程度の価格上昇になりました-1。
日本では、鋼材・鋼板22年夏に対20年比で40-50%程度値上がりし、若干下げながらもほぼ横ばいです-2。
米国では、鋼管・鋼材・鋼板は、22年に対20年比で最大60%上昇した後、30%程度増となりました-3。
銅材については、20年から21年にかけ60%近く値上がりした後、22年春に一時的に値を下げながらも、23年に高値で安定しています-4。
日本の銅価格-5はじわじわと上昇し続ける一方、米国の銅線及びケーブル価格-6はLMEの銅価格と同様に横ばいの動きを見せています。
アルミ材料-7について、22年夏に対20年比で最高50%程度上昇した価格は、22年後半には下がり価格は、対20年比で25%増程度まで落ち着いています。
アルミの圧延品価格-9も、同様の値動きです。
セメントについて、日本(セメント) -10も米国(生コンとプレキャストコンクリート) -11も価格は上昇基調が継続しています。
北米の建材価格と労働市場の動向とその変化
北米における生産工場プロジェクトを担当する、プロジェクトマネジャーの所感を下記に纏めます。
建材価格
- 鉄骨、鉄筋、コンクリート共に2022年までの急激な高騰から2023年は落ち着きを取り戻しました。
- 建材価格は、2021年のコロナ初期の価格近くにまで戻っています。
建材などの納期
- 主な建材の納期はコロナ禍にて急激に長期化していましたが、現在は軟化しています。
- 鉄骨、鉄筋は20%、屋根材の納期は50%短くなっています。
- 弊社と連携する欧米のライフサイエンスエンジニアリング会社も、北米内での金属建材調達納期の遅延を解消すべく、中国からの直接調達を実施した、と聞いています。
労働市場
- 建設業界での労働人口の不足は、依然改善されていません
- 建材と労務費を合わせた建設コストの上昇は、2023年は3-5%(対2020年比)のコロナ前の水準になると大手コンサルティング会社は予測しています。
まとめ
建材原料と建築素材の2023年上半期の傾向
- 建材原料について、熱間圧延鋼板・銅・アルミ価格は2020年秋から上昇傾向にありましたが、2022年を境に下がり始めて、現在安定しています。
- 鋼板・鋼材・セメントは日米共に、21年秋以降上昇傾向が続いています。
- 銅線価格は米国は2020年秋から高騰の後、22年春から落ち着きました。一方で日本は上昇基調です。
北米の労働市場の動向とその変化
- 建設業界では労働人口が依然として不足しています。
- 建材と労務費の価格上昇幅は、2023年にはコロナ前の水準に戻る、という予測があります。
シーエムプラス海外情報発信HP事務局