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ベトナム行政区画再編と企業への影響

ベトナム行政区画再編と企業への影響

ベトナムでは、現在の63の省・市を34に統合する地方行政制度の大規模な再編が進んでおり、行政制度のみならず、企業活動、産業立地、都市開発など広範な分野への影響が注視されています。

行政再編の背景
現在、ベトナムは58の省と5つの中央直轄市、合計63の一級行政単位を持つ三層構造の行政制度(省・郡・社)を採用しています。しかし、近年の経済発展や都市化の進行に伴い、人口規模や産業構造の地域間格差、行政機能の重複、地方財政の非効率性といった課題が浮き彫りになってきました。
これらの問題に対応するため、政府は行政単位の整理・統合を通じて、より効率的で持続可能な行政体制を構築しようとしています。あわせて、中長期的な国家開発戦略では、地域経済圏を軸とした政策展開が重視されており、行政の枠組みもそれに即した形に再編される方向です。

再編構想の概要
再編案では、63の省・市のうち11は現状維持とし、残る52の省・市を23に統合することで、最終的に34の広域行政単位を形成する構想です。また、この再編と併せて、従来の三層構造を見直し、郡レベルの行政単位を廃止したうえで、省と社(コミューン)の二層構造とし、社(コミューン)レベルの単位も最大70%削減する計画となっています。
統合の対象となる省や市は、地理的な近接性や経済的つながり、文化的背景などを基に選定され、具体的には、紅河デルタ地域や南部経済圏、中部高原地域などで統合が進み、南部ホーチミン市はビンズン省、バリアヴンタウ省と統合され、一大経済圏を形成するこになります。

実施スケジュールと制度移行
行政再編に関する具体的なスケジュールについては、すでに政府より発表がなされております。2025年6月30日までに関連法規や憲法の改正が行われ、7月1日以降、新たな二層構造(省と社)による再編が実施され、9月1日からは34省の行政体制による運営が開始されます。
再編によって設置される新たな省・市には、暫定的な指導部が任命されますが、2026年1月には5年に一度の共産党全国大会(第14回大会)が開催、同年3月には統合後初となる国会議員、地方議員が選出される予定で、これにより、新制度下での正式な政務運営が本格化する見通しです。

企業活動への影響と対応
行政再編は、国内外の企業活動にも多方面で影響を及ぼすと思われます。特に、事業登録や投資認可、税務手続、労働許可などに関わる行政機関の管轄が変更されることで、新たな体制が軌道に乗るまで、手続きにより時間を要することが推察されます。
一方では、インフラ整備の促進や広域開発が期待されており、また、投資優遇制度や、開発・産業の重点政策等を含む省単位の2030年、2050年に向けた開発方針書等、今後の通達・政令に注目する必要があります。

今回の行政再編は、ベトナム国家の発展戦略における重要な転換点といえます。単なる区画変更にとどまらず、行政制度、経済インフラ、企業環境に至るまで幅広い変化が見込まれる中、企業には柔軟かつ機動的な対応が求められるでしょう。
政府からの公式発表や関連法令の改正に注意を払い、これらの動向を継続的にフォローし、自社の経営戦略や体制整備に反映させていくことが求められます。

省改編
(2025年4月12日 第13期党中央委員会第11回会議決議第60-NQ/TW号添付)

Ⅰ. 合併対象外の省市

  1. ハノイ/Hanoi 市
  2. フエ/Hue 市
  3. ライチャウ/Lai Chau 省
  4. ディエンビエン/Dien Bien 省
  5. ソンラ/Son La 省
  6. ランソン/Land Son 省
  7. クアンニン/Quang Ninh 省
  8. タンホア/Thanh Hoa 省
  9. ゲアン/Nghe An 省
  10. ハティン/Ha Tinh 省
  11. カオバン/Cao Bang 省

Ⅱ. 省市統合

Ⅲ. 五十音順 省改編早見表


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