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海外工場建設プロジェクトの進め方-VOL.3

海外工場建設プロジェクトの進め方-VOL.3

海外工場建設プロジェクトの進め方(10回シリーズ)

第3回:実施設計会社、及び工事会社の選定

基本設計が完了すると次に実施設計と工事を具体化させる段階に進みます。

設計会社と工事会社を選定する方策にはいくつかの種類がありますが、契約形態としては主に以下の3つに区分されます。

1) 建築実施設計を現地設計会社へ発注し工事会社と分離する。また、製造機械は施主が別途購入、据付する。
2) 建築工事会社に建築実施設計と工事を一括発注し、製造機械は施主が別途購入、据付する。
3) 製造機械購入、建屋も含めて全てゼネコン、もしくは、エンジニアリング会社に発注する。

論理的には、上記番号順で費用は増加し、遂行上の追加費用、工程遅延リスクはその番号順で小さくなります。欧米的な進め方に習った考え方ですが海外でのローカルプロジェクト遂行では上記の1)のパターンが一般的です。そのため、現地ローカル建築工事会社は工事会社であり、実施設計をこなすだけのエンジニアを十分に抱えていない企業がほとんどです。彼らが雇用しているのは施工図作成用エンジニアや施工管理エンジニアのみという会社が多いのです。故に、彼らに上記の2)のパターンで発注しようとすると、彼らが設計事務所をサブコンとして確保することになります。

この設計・施工分離発注や、設計・施工一括発注の利点、欠点を詳しく説明し始めるととてもこのコラム欄では記述しきれませんし、海外特有の記事ではないのでここでは詳しくは説明しません。ただ、日本のオーナー様は、日本同様、日系ゼネコン、或いはエンジ会社に設計・施工一括発注を好まれます。主な理由は、自社組織内に建設に詳しいスタッフが存在しないこと、設計ミスによる工事手直し追加費用を負担したくない、実施設計開始から工事完了までの納期を最適化できると期待されることがその理由でしょう。日系大手ゼネコンやエンジ会社はそのようなニーズに合わせて海外でも対応可能体制を構築していますが、海外建築業界ではこのような遂行組織は世界から見ると特殊であると言えます。

どの契約形態がその案件に一番合っているかは工場施主がどの点にプライオリティーを置いているかという価値判断にもよります。お金か、納期か、工事品質か、外装・内装への強いこだわりがあるかなどによって決められます。

実施設計を工事会社から分離した場合、設計会社は設計ミスをしても、せいぜい、設計やり直しぐらいしか負担しませんので、設計会社の選定には注意が必要です。また、設計会社が作成する図書のボリュームと中身の密度に関しては、工事会社の理解と齟齬が発生しないように、設計会社との契約でも成果物内容には細心の注意を払っていきます。設計を分離した場合の良い点は、発注者が何を実現したいかを設計に盛り込んでから複数の工事会社を競争させられることです。意匠設計にこだわりたいオーナーにとっては設計施工分離発注は検討すべき選択肢でしょう。

また、設計事務所の成果物を使って工事会社に見積引合を実施するのですが、実施設計図面が完成するまで工事会社の引合を実行しないとするとその分時間がかかってしまいます。時間を節約するためには工事契約金額を決定するために必要最小限の見積引合用図書を完成させて、まずはそれを工事引合用として使用することが一般的です。

さらに、海外では工事さえも複数に分割して発注されることが少なくありません。特殊工事(杭、エレベーター、設備工事)は躯体・仕上げ工事から分離発注されることも良くあります。このような発注形態では、誰かがそれらの調整役を担わないとプロジェクトは崩壊してしまいます。よって、発注者の組織にプロジェクト経験豊富なチームを構築し、これらをマネージしてゆかなければなりませんが、弊社がお付き合いしているほとんどの発注者様にそのような専門家は存在していません。そうするとどうしても弊社のようなコンストラクションマネージメントコンサルタントが必要となってきます。

尚、施主様自身で製造機械を分離発注する場合、日本ですとメーカーや代理店に依頼するのが簡単ですが、海外案件では製造機械をどこから調達、輸入し、誰に据え付けてもらうかも大きな検討課題となります。いずれにしろ、現地の設計会社、現地の工事会社へ分離発注する場合は、注意深くその界面調整を行わないと期待するような納期、品質にならないであろうと容易に想像できます。

企業様によっては基本設計段階、もっと言えば工業団地選定段階から大手ゼネコン1社にお任せするというケースもあります。しかし、ステークホルダー(例えば株主)への説明責任もあり、一定規模の案件であれば基本設計完了後に競争入札により工事会社を選定する必要性が高まっています。 設計施工一括発注のケースでも、引合作業にお悩みの企業様では、その国の実情を理解している設計事務所や弊社のようなCM会社にその引合支援を依頼することが良いでしょう。引合書では、基本設計図書(技術要求図書)と契約条件書(工期、支払い条件、賠償責任などを規定している文書)を候補企業へ渡して見積提案をしてもらいます。 時々、これらを非常に簡略化した要求事項が曖昧な数ページの引合図書で見積を取る企業様がいらっしゃいますが、結局、複数社から提出される提案書の金額のベースとなる条件がバラバラになり、金額だけに着目し契約条件を十分に検証されないまま工事会社選定され、プロジェクトの途中で追加費用交渉で揉めるという事例を良くみます。ですので、少々の時間と費用がかかりますが引合図書パッケージを厳格に定義して見積を取る事が、急がば回れの例えの通り後々の問題を最小にする方策と考えます。

シーエムプラス海外情報発信HP事務局

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