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海外工場建設プロジェクトの進め方-VOL.6

海外工場建設プロジェクトの進め方-VOL.6

海外工場建設プロジェクトの進め方(10回シリーズ)

第6回:見積書評価と選定

さて、前回の引合図書を入札参加企業へ配布したら、次の作業は引合図書パッケージに対する質疑応答、現場視察のアレンジとなります。そして、見積提案書の提出を待ちます。国内案件でも海外案件でも基本的に大きな手順の違いはありません。この期間、できれば詳細設計をロケットスタートさせるために基本設計図書を再確認して変更すべき要求事項が無いか確認しておくことも重要です。もし、大きな変更をする必要があるなら見積もり期間を延長させてでも追加指示として各施工会社へ通知しなければなりません。

評価項目は多義に渡りますが、海外案件では特に、①その国での実績、②責任者の海外実績、③日本の本社との連携方針、④物品輸入に対する知見、⑤着工認可までの申請手順に関する知見、⑥引合要求事項理解度などに注意します。

仕事欲しさに何も条件を付けずに金額だけが低い見積書が提出された場合は注意が必要です。その金額だけを見て発注すると「こんなはずではなかった。」と後悔することになります。引合時点で明確に確認しきれないまま契約すると、引合条件書の完成度によっては契約後の追加交渉は下手すると契約金額の10%を超える金額に膨らむこともあります。海外ローカル建設会社の中には、追加支払いに応じなければ工事を止めるというクレーム(脅し?)は当たり前の交渉術だと考えておくべきでしょう。

見積書を受領したら、各社にプレゼンを実施してもらい、その受注に向けた熱意を実際に感じる機会を設けます。また、その場では遂行プランに対する質問も行い、その場の回答を議事録に残します。項目によっては契約上の重要事項にもなりますので、そのような質疑が行われた場合はその議事録も当該企業が選定された場合は契約添付文書として扱います。

さて、評価を経て、最後に2社が残ったと仮定します。この2社にさらに競争してもらってより価格を下げることもあるでしょう。施主様のカルチャー次第でこの最終交渉術も異なりますし、施主様の作戦事項ですから本記事ではこれには触れないでおきます。もちろん、弊社もアドバイスいたします。さて、ようやく1社に決めたら、FIDICでいうとことのLOA(Letter of Acceptance)、もしくはLOI(Letter of Intention)に金額、納期、交渉過程で合意した議事録などを記載、もしくは参照して両者にてサインします。交渉上、宿題になっている項目があればそれも記載します。契約書締結を待たずにこの合意を持ってプロジェクトをスタートさせることが可能となります。通常、この時から1~2カ月以内に契約書締結を目指しますが、万一、正式契約書が合意できない場合を想定して白紙に戻した場合の費用負担条件も記載します。正式契約締結までは設計は進めさせるものの、物品調達は契約締結を待ってから許可するというのが通常のやり方だと思います。

契約書、約款ドラフトに対しては、引合い期間中に原則質疑を交えてほぼ合意しておくことが契約書締結までの時間を最小にしてくれます。これをしないで、1社に決めてから「協議しましょう」としても合意点を見出すために時間を浪費する可能性は高いです。一方で、第5回で述べましたが、コロナ禍のような状況下では、工事停止リスク、予想を超えるインフレーションなど契約前に明確に合意できる可能性は低く、「(そのような場合は)協議により決定する。」という玉虫色条項を契約書に記載することで締結につなげるというのもあり得ます。平常時であれば、発注前の条件交渉は発注者有利で進めることは可能ですが、コロナ禍のような事態になると契約前に合意着地点を見出すための協議には相当の時間がかかると思われますので、互いの信頼ベースでプロジェクトに直接影響を与える事象が発生した時点でAmicableに協議するという契約条項も選択肢の一つでしょう。

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