トピック

企業の海外進出・展開のポイント(ASEANのコンサルティングの現場から)

企業の海外進出・展開のポイント
(ASEANのコンサルティングの現場から)

企業の海外進出・展開のポイント(ASEANのコンサルティングの現場から)

はじめに:

本コラムでは、東南アジアにおいて日系企業の進出をコンサルタントとしてサポートさせて頂いている筆者が、様々なプロジェクトの経験から、また海外各地で活躍されている日本や現地のビジネスマン・経営者の方とお話する中で、感じている海外進出におけるポイントを複数回に 分けて寄稿させて頂きます 。

あくまで個人的な見解ですので、偏った見方もあるかと思いますが、その部分はご容赦頂ければ幸いです。

「海外進出」と聞いて、どのようなイメージを持たれますでしょうか?
「日常的なイベントの一つだ」というグローバル企業の方もいらっしゃるとは思いますが、多くの企業にとっては、社運をかけた、とは言わないまでも、特別な経営上の意思決定と捉えられているのではないかと思います。もちろん頻繁にあることではないですし、資金や人材、様々な経営資源の投入を必要とする大きなイベントであることは確かです。ただし、国内でも新規出店や工場移転、新製品の開発やチャネル開拓等、重要な経営事項は多数あります。海外進出についても何か特別なルールがあるわけではなく、こうした国内における経営上の意思決定と同じ理屈に則って考えればよいと私は思っています。その中で私が重要だと考えるのは、各施策・選択が相互に矛盾しておらず目的と整合的である、ということです。

例えば、日本で1斤1000円と超高級だけれど大変おいしい食パンで勝負しているパン屋さんが同じ業態で海外進出する場合、数百店舗を現地で展開する大手ベーカリーチェーンとのパートナーによるフランチャイズ展開を選択することは果たして妥当でしょうか?確かにそうしたチェーンは、人通りの多い立地の確保に強みを持ち、各種原料も規模の経済により安価に調達することが可能です。ただし、そのパン屋さんは日本では目立たない路地裏で味に対する口コミと評判でお客さんを集めており、高級食パンは大量生産のための一般的な原料では作ることはできないのです。

例えば、製薬企業がコスト削減を目的として海外に工場を作る場合、どのような場所を選ぶべきでしょうか?(新興国における)海外生産で得られる最も大きなコストメリットは安価な人件費ですが、単に最低賃金や平均賃金の低い国・地域を選んでも意味はありません。安定した高度なオペレーションと品質管理が求められ、資本集約的な生産体制である製薬業では、相応に教育された理系人材の供給が見込めるエリアであることがより重要です。(もちろん、その他に重要な要素が山のようにありますが)
国内では、誰をターゲットとして、どのエリアに、どのようなコスト構造で店舗を展開するか、また生産における欠かせない要素は何か、を当然のように考えられても、海外ではどこか違う発想になってしまうという企業がありますが、基本的には経営の原理はどこの国でも変わりませんので国内と同じように検討を進めていけば良いと思います。

一方で、海外では日本での事業と比べ注意しなければいけないポイントがあるのも確かです。それらについて次回以降のコラムで少し触れていきたいと思います。第3回のコラムで、製造拠点及び販売拠点として進出するにあたって調査・把握しておくべき項目について、第4回以降では5W1Hの観点から進出戦略・計画のポイントについて触れていく予定です。

回  テーマ
第2回 海外事業の成功について(現地化と差別化、また海外事業の成功とは?)
第3回 FS実施上のポイント 生産拠点としての進出/販売拠点としての進出
第4回 海外展開検討を行う上での視点① Why/What-目的・ビジネスモデル
第5回 海外展開検討を行う上での視点② Where-エリアの選定
第6回 海外展開検討を行う上での視点③ When-時期・実行可否の見極め
第7回 海外展開検討を行う上での視点④ Who-人材戦略
第8回 海外展開検討を行う上での視点⑤ How-進出・拡大の手法

海外展開に成功している企業の共通点
海外ビジネスに成功している企業について、その成功要因を考える場合にいくつか欠かせないキーワードがあると考えます。それは「先行者利益」「現地化」「差別化」です。

「先行者利益」
JETROが毎年行っているアジア各国に拠点を有する日系企業へのアンケートで、業歴と業績の関連性という調査項目がありますが、参入時期が早く業歴が長いほど業績が良いという関係性は明らかです。

JETRO「2019年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」より作成

1980年代初頭にまだ1人あたりGDPが300ドルに満たないインドに進出したスズキは早期進出により当地で大きな事業的成功を収めた企業の代表例です。また、ローカル色の強い建設業でも大気社、三井住友建設等、早期にアジア進出し海外事業が大きく全社業績に貢献している企業があります。

市場が成熟する前に進出しブランド認知を高め販売網を構築する、採用競争が厳しくないうちに獲得した人材がリーダーに育ち中心的役割を担う、当初は輸入するしかなかった部品をサプライヤーの発掘・育成により現地調達が可能になる、といったように理屈的にも早期の進出は成功を収めるための競争優位の構築の大きなアドバンデージになります。もちろん市場参入が早い程有利な地位を得やすいのは国内でも同様ですが、未開拓の市場・可能性が新興国は特に大きいこと、また海外ではその優位性獲得に時間を要することから、よりクローズアップされやすい点かと思います。

ただし、JETROの調査結果は「早期進出した企業が成功している」と同時に「早期進出して成功した企業が現在も各国で営業を続けている」、つまりこの裏には「進出したが事業が軌道に乗らず諦め撤退した」企業も存在し、「海外で採算に乗せるには相応の時間が必要だ」ということも示しています。当然ながら「とにかく早期に進出すれば成功する」とは言えません。このあたりについては、第6回のコラムにて少し詳しく触れていきたいと思います。

次回のコラムでは、残る2つの要素である「現地化」と「差別化」についてお話できればと思います。

【執筆者】
山田コンサルティンググループ  牧村 拓哉

第2回:企業の海外進出・展開のポイント»