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ベトナム北部で食品工場の好機 中食需要と小売北上が後押し

ベトナム北部で食品工場の好機 中食需要と小売北上が後押し

今回は、ベトナム経済・ビジネス専門メディア「InfoBank」を運営する 株式会社InfoBase 様 にご寄稿いただいた記事をお届けします。

同社は、ベトナム現地での取材とネットワークを通じた一次情報の収集を強みとし、マクロ経済・政策から製造、消費・流通、物流、法務・税務まで幅広い分野の情報発信と市場調査を手掛けています。本サイトへのご寄稿は今回が初めてとなります。

本記事では、長く南部が中心とされてきたベトナムの食品工場について、北部が新たな立地候補として浮上している背景を取り上げます。コンビニ・ミニスーパー各社による北部出店の加速、先行する食品工場投資の事例、南部より割安な工業用地と進む交通インフラ整備、ハノイの消費の伸び、そして成長余地の大きいコールドチェーンという観点から、北部進出を検討する際の着眼点を整理していただきます。


目次

1. 小売の北部出店ラッシュが食品工場の新たな需要を創出
・コンビニのハノイ出店が中食の北部生産を後押し
・ミニスーパーとイオンが地方都市まで販売網を広げる
2. 北部で動き出す食品工場投資・業界動向の事例
3. ベトナム北部が食品工場の立地として注目される理由
・工業用地の割安さと交通インフラ整備による立地優位
・伸び率でホーチミンを上回るハノイの消費市場
・コールドチェーンの成長余地と北部進出を考える視点

 

ベトナムの食品・小売市場では長く南部ホーチミン市を中心とする南部が主戦場とされ、食品工場も南部に集まってきた。

しかし2025年以降、コンビニやミニスーパー各社が北部への出店を加速させており、工場の立地先として北部へ視線を広げる企業が増えている。用地コスト、交通インフラの整備、消費市場の成長性が重なり、ベトナム北部は「次の食品工場・生産拠点」として注目が集まっている。

1. 小売の北部出店ラッシュが食品工場の新たな需要を創出

食品工場の生産拠点としての可能性を考えるうえで、まず注目したいのが販売先となる小売網の北上である。

コンビニのハノイ出店が中食の北部生産を後押し

日系コンビニチェーンの北部進出が続いている。セブン-イレブンは2025年6月にハノイ市内1号店を開業し、ホアンキエム区周辺を中心に出店を進めている。南部で約20年展開してきたファミリーマートも、2026年8月20日からハノイで順次開店しており、年内に市内20店舗を目指す。店頭ではカップ鍋やおにぎり、弁当、ホットスナックなどの中食が目立ち、重点商品に据えている様子がうかがえる。

韓国系のGS25も2025年3月にハノイで6店舗を同時開業し、1年後の2026年3月時点で市内50店超に拡大した。中食は鮮度とリードタイムが品質を左右するため、南部から長距離輸送するよりも消費地の近くで製造するほうが有利だ。コンビニの店舗網が北部に広がるほど、北部で製造する必要性は高まっていく。

ミニスーパーとイオンが地方都市まで販売網を広げる

ミニスーパーでは北部シフトがさらに鮮明だ。ミニスーパー大手WinCommerceは2025年に新規出店した764店のうち、約98%にあたる750店を北部と中部に集中させ、北部単独でも409店を出した。2026年2月時点で北部は同社最大の市場で、店舗数は2,548店に達する。

また、南部発祥のBach Hoa Xanhは2025年11月、最初の北部拠点にハノイではなくニンビンを選んで20店舗を同時開業し、2026年5月7日時点で北部の店舗数は141店となった。同月15日にはハノイ郊外の住宅地に、伝統市場に近い立地を選んで8店舗を開いた。

イオンも10月3日、紅河デルタ初の中規模ショッピングセンターとなるイオン・ハイズオン(行政上はハイフォン市)を開業している。販売網がハノイ中心部にとどまらず周辺の省や地方都市へ面的に広がっていることは、北部に工場を置けば域内の幅広い売り場に短時間で供給できることを示唆する。

ベトナム北部における主要小売企業・ブランドの出店動向
企業・ブランド 業態 北部での主な動き
セブン-イレブン コンビニ 2025年6月6日にハノイ1号店を開業。ホアンキエム区周辺を中心に出店
ファミリーマート コンビニ 2026年8月20日からハノイで順次開店。ハノイでは今年度約20店舗が目標
GS25 コンビニ 2025年3月14日にハノイで6店舗を同時開業。2026年3月時点で市内50店超
WinCommerce ミニスーパー 2025年の新規出店764店のうち北部が409店。2026年2月時点で北部は2,548店と同社最大の市場
Bach Hoa Xanh ミニスーパー 2025年11月にニンビンで20店舗を同時開業し北部進出。2026年5月7日時点で北部141店、同月15日にハノイで8店舗を開業
イオン ショッピングセンター 2026年10月3日、紅河デルタ初の中規模SC「イオン・ハイズオン」(行政上はハイフォン市)を開業

2. 北部で動き出す食品工場投資・業界動向の事例

小売の北上に呼応して、食品工場への投資も動き出している。外食大手ゴールデンゲートは2026年9月19日、フート省のティエンティエン工業クラスターで食品加工と配送を一体化した新工場を開所した。現地報道によれば、最大2,000店舗に供給できる設計能力を持つ大規模セントラルキッチンで、原料の下処理からソース、餃子、生麺、ベーカリー製品、ピザの製造までを一貫して担う。北部の店舗需要を北部の工場でまかなう体制づくりが、大手外食ですでに始まっていることを示す事例だ。

業界展示会の動向にも変化がある。加工・包装技術の展示会「ProPak」が10月13〜15日、ハノイ・ドンアインのベトナム展示会センター(VEC)で初めて開催される。主催者は、北部が製造・物流拠点として台頭し、ハノイやバクニン、ハイフォン、フンイエンで食品・飲料分野の大型投資が続いていることを北部開催の理由に挙げる。設備や資材のサプライヤーが北部に集まる機会が増えれば、工場の立ち上げに必要な調達もしやすくなる。

3. ベトナム北部が食品工場の立地として注目される理由

では、生産拠点として北部にはどのような利点があるのか。

工業用地の割安さと交通インフラ整備による立地優位

Cushman & Wakefieldの2026年第2四半期レポートによると、北部の工業用地の平均募集賃料は1㎡当たり137.7ドル(リース期間一括)で前年比2.7%上昇したが、南部の186.4ドルと比べると約4分の3の水準にとどまる。

北部の稼働率は64%と前年比2.7ポイント低下したものの、主因は新規供給の大量流入で、ハノイはほぼ満床、バクニンとフンイエンも70%超を維持している。2026〜2028年には約7,200haの追加供給が見込まれ、用地の選択肢はさらに広がる。

交通インフラでは、2023年6月に着工したハノイ環状4号線が代表的だ。市中心部の渋滞を緩和し、首都圏とフンイエン、バクニンなど周辺の工業省を結ぶ物流を円滑にする目的で、並行道路や高速道路部分の整備が段階的に進む。一部で工期の遅れも報じられているが、完成すれば工場から消費地への配送効率は大きく高まるとみられる。

北部の工業用地の主要指標
項目 数値
平均募集賃料(北部) 1㎡当たり137.7ドル(リース期間一括)、前年比2.7%上昇
平均募集賃料(南部) 1㎡当たり186.4ドル(北部の約1.35倍)
平均稼働率(北部) 64%(前年比2.7ポイント低下、主因は新規供給の増加)
主要省の稼働率 ハノイはほぼ満床、バクニン・フンイエンは70%超
追加供給の見込み 2026~2028年に約7,200ha

伸び率でホーチミンを上回るハノイの消費市場

ハノイの2026年1〜9月の小売・消費サービス売上高(名目値)は810兆9,290億ドンで、前年同期比15.6%増だった。うち食品小売は115兆250億ドンで17.6%増、宿泊・飲食サービスも115兆3,270億ドンで16.3%増と高い伸びを示す。ホーチミン市は1,488兆6,890億ドンで13.8%増、全国は13.4%増(物価要因を除くと7.8%増)であり、市場規模ではホーチミン市が上回るものの、伸び率ではハノイが勝る。

外食でも同じ傾向がある。ジェトロが2026年7月に更新したカントリーレポートによると、グルメサイトFoodyの掲載飲食店数はハノイが7万3,715店(前年比5.2%増)、ハイフォンが1万1,635店(10.3%増)で、ハイフォンの伸びは主要都市で最も高い。日本食レストランもハノイが589店(4.2%増)と、ホーチミンの1,382店(1.6%増)を伸び率で上回る。小売向けの中食に加え、外食向けの業務用食材の需要も北部で着実に育っているといえる。

コールドチェーンの成長余地と北部進出を考える視点

食品工場の立地を考えるうえで欠かせないのが低温物流である。ベトナムの冷蔵・冷凍倉庫はこれまで南部に集中しており、北部や中部へはコストと時間をかけて運ぶ必要があった。裏を返せば、北部は南部ほど競争が激しくなく、成長余地の大きい分野でもある。有望な立地としてはハイフォン、フンイエン、クアンニンが注目されており、工場と低温物流の拠点を一体で構想しやすい点は北部ならではの利点だ。

小売網の北上、先行する工場投資、割安な用地と整備が進むインフラ、そして高い消費の伸び。これらが重なるベトナム北部は、南部中心の生産体制を見直す企業にとって有力な選択肢になりつつある。検討にあたっては、販売先となる小売・外食チェーンの出店計画と、用地や物流インフラの整備スケジュールを重ね合わせて見ることが、立地判断の精度を高める鍵になるだろう。

 

参考記事

  1. ベトナム・ハノイ市にファミリーマート初出店! 〜新エリアでの展開を開始し、9月19日にはグランドオープンセレモニーを開催〜(ファミリーマート ニュースリリース、2026年9月11日)
    https://www.family.co.jp/company/news_releases/2026/20260911_01.html
  2. Northern Vietnam becomes a new destination for processing and packaging technology.(vietnam.vn、2026年6月25日)
    https://www.vietnam.vn/en/mien-bac-thanh-diem-den-moi-cua-cong-nghe-che-bien-va-dong-goi
  3. Foreign direct investment expands across Hung Yen industrial zones(Vietnam Investment Review、2026年10月2日)
    https://vir.com.vn/foreign-direct-investment-expands-across-hung-yen-industrial-zones-161988.html
  4. Northern Key Economic Zone Industrial MarketBeat(Cushman & Wakefield、Q2 2026)
    https://www.cushmanwakefield.com/en/vietnam/insights/hanoi-marketbeat/industrial-marketbeat
  5. WinCommerce mở mới 764 cửa hàng năm 2025, đặt mục tiêu 1.500 cửa hàng trong năm 2026(CafeBiz、2026年1月14日)
    https://cafebiz.vn/wincommerce-mo-moi-764-cua-hang-nam-2025-dat-muc-tieu-1500-cua-hang-trong-nam-2026-176260114170455373.chn
  6. ベトナムへの農林水産物・食品の輸出に関するカントリーレポート(ジェトロ、2026年7月)
    https://www.jetro.go.jp/ext_images/agriportal/platform/vn/pf_vho.pdf

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【執筆者】 ベトナム経済メディアInfoBank編集長 三浦 賢弥
ベトナム経済メディアInfoBank編集長 三浦 賢弥

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